2016.11.02
『「食品ロス」を減らせ』~世界各国で、意識変革と社会的な仕組みづくりが広がっています~
売れ残りや食べ残しなど、まだ食べられるはずの食品が廃棄されてしまう「食品ロス」、日本国内の「食品ロス」は、農林水産省の2013年の推計で年間632トン、内訳は飲食店など事業系が約330万トン、家庭系が約302万トンと、世界全体の食糧援助量の約2倍に達するほど、日本は世界有数の食品廃棄国です。
食品ロスの問題は、日本だけではなく、先進国の間でも共通の課題となっています。
2015年の秋、国連加盟国は全会一致で食糧問題や環境問題などへの対応として、「2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料廃棄を半減」を掲げ、2016年5月に行われた、G7の環境相会合でも、各国が協調して取り組むことで一致しました。
食品ロスを減らすことは、食べ物を粗末にしないということだけにとどまらず、企業にとってはコストの削減、消費者にとっても無駄な支出を減らすことにつながります。
では、このような取組について、主要3か国の現状と併せてご紹介します。
1.アメリカ 収益を上げて問題を解決しようと新興企業が登場
米環境保護局(EPA)によると、米国で埋め立て処理される食品は年3,500万トンに上る。一方、経済的な理由で十分な食事がとれない米国民の割合は14.3%。食品ロスを15%減らして活用すれば、年間に2,500万人以上に十分な食事が行き渡る量が確保できると試算されている。米農務省(USDA)と米環境保護局(EPA)は昨年、2030年までに「食品ロスの50%削減」という目標を設定した。
そんな中、収穫全体の2割にあたる、傷や大きさにばらつきがあるという理由だけで、処分される農作物に目をつけた企業 米インパーフェクト・プロデュース(カリフォルニア州)は、こうした“不完全”な野菜や果物を低価格で買い取り、市場価格より3割ほど安く消費者に宅配している。同社サービスを利用している消費者からは、「料理すれば元の形は残らない」と満足げだ。
また、流通業者と、余った食品を生活困窮者らに無償で配るフードバンクや慈善団体の間をつなぐ携帯端末向けアプリを開発する企業 米フード・カウボーイ(メリーランド州)は、流通過程では1箱が規格外と判断されるだけで、積荷全部の受け取りを拒否されたり、寄付するにも寄付先をすぐに見つけないと食品が腐ってしまうといった問題点に着眼した。開発したアプリは、トラックの運転手が農作物の種類、量などを入力すると引き取りを望む近場の施設から連絡が来るという仕組み。流通業者は食品を寄付することにより税制面で優遇され、そこから手数料をカウボーイ社に支払う。同社は収入の一部をフードバンクに投資して設備拡充に充ててもらう。
2.フランス 売れ残り食品の廃棄を禁止する法律
国連食糧農業機関(FAO)によると、フランスでは食べられるのに家庭やレストランで廃棄される食品は、約700万トン。2013年にフランス政府は、2025年までに廃棄される食品の量を半減させるという大胆な目標を打ち立てた。
そんな中、今年度フランスの国民会議で、大手スーパーマーケットがまだ食べられる食品を廃棄処分することを禁じる法律が可決された。店舗の面積が400平方メートルを超えるスーパーマーケットは、賞味期限切れなどで販売できなくなった食品を処分することができない。
法律が制定されるまでは、廃棄食品が持ち去られるのを防ぐためにゴミ箱に鍵をかけたり、食べることができないように化学薬品で処理した上で、廃棄されたりしていた。
法律制定後は、売れ残った食品は慈善団体に寄付するか、家畜の飼料や肥料に転用しなければならなくなり、スーパーマーケットは慈善団体と契約を結ぶことも義務付けられている。
3.デンマーク、イギリス、韓国の取り組み
デンマークでは、2016年2月に賞味期限切れの食品を専門に扱うスーパーが登場し、最大5割引きで販売。毎朝行列ができる人気ぶり。
イギリスでは、政府機関の財政支援で設立された非営利団体「WRAP(ラップ)」が、商品廃棄物に関するさまざまな調査を実施し、実態を詳細に把握。削減に取り組む事業者へのノウハウ提供や、消費者へのキャンペーンなどを手掛ける。
韓国では、家庭系ロスの対策で、家庭の生ゴミに対し従量制で課金する制度を導入。
日本では、2015年12月10日に「食品ロス削減関係省庁等連絡会議」を設置し、過剰在庫などの商慣習の見直しや、食べ残し削減、家庭での食品廃棄の削減などに取り組みはじめたばかりです。
そんな矢先、2016年1月にカレーチェーン店の廃棄カツが産業廃棄物処理業者からスーパーなどに転売されていたことが発覚しました。これを受け、食品廃棄物がいかに多いかという実態が明らかになりました。
2016年7月、食品メーカーなどでつくる業界団体「製・配・販連携協議会」は、保存期限が長い加工食品の賞味期限を日付単位から月単位表示に改める、納品期限を見直すなどの取り組みを打ち出しました。
まだまだ日本では「食品ロス」削減に向けた取り組みがはじまったばかりですが、企業の取り組みだけでは無く、消費者である私たちのライフスタイルの大変革も必要であると感じます。